5話 豪雨災害と「苺のしずく」と
登場人物
保宏明
NPO法人杜の家会計担当兼おおもり農園事務方。
苺のしずく開発担当者。
森高寛行
NPO法人杜の家事務局長。
おおもり農園の事務方でもある。
森高)前回、保健所への手続きが色々あるという話をしましたが、そんな中で平成30年7月豪雨が起こりました。まずはあの日のことについて振り返っていきたいと思います。
保)朝、出勤したら事務所が水浸しになっていましたね。
森高)床下浸水でしたね。地域的には被害らしい被害はなかったのですが、事務所の周囲だけちょっと土地が低くて。
保)とはいえ事務所はまずまず無事だったので、次は市内3箇所のイチゴハウスの安否確認をしようとなりました。2箇所へは行って無事を確認できましたが、東区平島にあったハウスへは、周辺地域一帯通行止めになっていて行くことができず。
森高)ハウス周囲の広範な一帯が1m以上浸水していて、水が引いた翌日にようやく行くことができましたね。
保)あの時、社長と森高さんとで確認に行きましたよね。
森高)行きました。ハウスは水没して再建不能な感じだし、浸水エリアがものすごく広大で、ちょっと言葉が出なかったですね。
保)この時失ったハウスは、前年に人から借り受けて整備を進めていたものでした。いよいよこの年の冬から本格的に収穫できるというタイミングだったので、経営的にも大打撃でした。
森高)そのことをきっかけに、苺のしずくの販売が加速していくわけですね。
保)そうです。次のシーズンの生産量激減が確定したので、少しでも加工品などを充実させていかなければ立ち行かなくなる、と焦っていました。ちょうど、豪雨災害対応型の小規模事業者持続化補助金が使えそうだという話になり、藁にもすがる思いで応募したところ採択され、ホッとしました。
森高)あれは本当にありがたかったですね。
保)そうですね。水没したハウスが自社所有ではなかったため、行政の支援策を受けることができず、ほとんどこれだけしかエントリーできなかったんですよね。豪雨災害の前から少しずつ開発を進めていたことが功を奏した部分もあったと思います。本当によかったです。
森高)そして補助金の力を得て一気に商品化にこぎつけましたね。
保)その年の9月には完成して、バーコントワールさんでさっそく取り扱っていただきました。反響は上々で、月に何本も納品したのを覚えています。
森高)あの大変な時期だったからこそ、色々な思いがこもっていった感がありますよね。
保)そうですね。思い出深いです。そういうストーリー込みで味わっていただくのもいいし、シンプルにイチゴの風味を楽しんでいただくのもいいと思います。多くの方に飲んでもらえると嬉しいですね。(完)